いのちの初夜
命とはなんだろうか。急ピッチでボケてきたおばあちゃんを見て考える。
あの本を思い出した。この夏に北条民雄っていう勇ましく雅な名前を青空文庫で見つけ、適当にページを進めた"いのちの初夜"という本。
病で社会から隔離され、これからすべてを失っていくさだめを与えられた主人公の物語。
「人間ではありませんよ生命です。いのちそのものなんです。あの人たちの『人間』はもう死んで亡びてしまったんです。ただ、生命だけがびくびくと生きているのです。」
そんなパンチラインがあった。
おばあちゃんは僕の名前をすぐには出さなかった。出せなかった気がする。いつもなら顔を見てすぐに飛び出していた名前。
もしもこの先、すべてを忘れてしまったら目の前のおばあちゃんはおばあちゃんのままなのだろうか。おばあちゃんじゃない人になるんだろうか。動けなくなったら目も開かなくなったら。上のパンチラインが扉を叩きます。
どんな自分で世を去るのだろうか。
どんな自分で世を去れるのだろうか。
考えています。
そしてもうちょい必死にならないともったいねーなと考えています。