第一話 みんな違ってみんないい
エッセイ「きむらとかぞくとおんがくと」
"第一話 みんな違ってみんないい"
ひとことで家族を表すとしたら、ぼくの家族はどうやら"複雑"らしい。「みんな違ってみんないい」という金子みすずさんの言葉があるが、それは僕らの名字にも当てはまるのだろうか?昔は家族みんな木村だった気がするんだけども…。
靴の生産で有名な神戸の長田。靴底を吐き出す音が鳴り止まないゴム工場で出会ったパパとおかんは大恋愛の末に、結婚。見事、僕と弟の亮太を誕生させた。
そして、僕が5歳の頃だろうか。すべての"複雑"の根源はこの出来事だと確信しているのだが、パパがある女性を走行中の車から突き落とした。浮気していた女性だった。
それがきっかけで不貞行為が明るみになり、パパとおかんは離婚。親権はおかんが持った。
ママ(祖母)がスナックのママをしていたことも影響してだろう、僕と弟を育てるためにおかんもスナックのママになった。女手ひとつで僕と弟を育てていくことになる。気がつけばおかんは趣味の占いの影響で、木村から旧姓の中本になっていた。その方が星の巡りがいいんだそうで。
case1.【木村美恵→中本美恵】
次に3つ下の弟 亮太。彼は僕がイジメすぎたせいでグレてしまった。中学校もほぼ不登校になってしまい、いつしか入れ墨に憧れを持ち、知らぬうちに墨汁と針を使って足に金魚を描いてみせた。正そうとすればするほど、弟の心は遠くに行ってしまった。
中学卒業式の後、校門まで迎えに来ていた警察に連れて行かれ、そのまま少年院へ。中学生の背中に不動明王を彫ったのだ。頼まれたとしても未成年に入れ墨を彫ると傷害の罪に問われるらしい。
何度か少年院の出入りを繰り返した後、弟は気に食わない木村という名字を捨てるためママ(祖母)の養子になり岸亮太になり、実家を出たのだった。
case2.【木村亮太→岸亮太】
残された僕と遠くで暮らすパパだけが木村を掲げて生きている。先日知ったのだが実はパパ、産みの母親と育ての母親が違ったらしい。それを知ったのは随分と大人になってからだったみたい。
case3.【??幸治→木村幸治】
もはや、本来自分が持つべき名字はなんだったんだろうか?そんなことに想いを馳せる夜もあったりなかったり。みんな違ってみんないい?
兎にも角にも、僕の使命はこの"複雑"な糸を解きほぐしシンプルにする。これから綴っていく物語ではこれだけに注力したいと思う。
case4.【木村勇太→こんそめぱんち☆木村】