母親がエコモードになって3ヶ月が経つ。ちなみにエコモードとは死んだってことです。いや、本当にこれがエコでして。ご飯も食べなくなったし、お風呂にも入らなくなった。
その代償に、買い物にも行ってくれなくなったし、洗濯も料理もしてくれなくなった。夜中、BTSやあいみょんが隣の部屋から聴こえてくることもなくなった。何事も良し悪しありです。
「小さなベランダで小さくBBQをしよう」とひいきにしてたAmazonから届いたBBQセットも埃をかぶって眠りについたままだ。
最近はサボってた線香もあげてる。手を合わせる。手を合わせるとなんか心が落ち着く気がする。そんな落ち着いた時間を利用して、僕はあの25年住んでた家の扉をノックする。
「ただいま」
母子家庭で、スナックで働いてたおかん。生活はすれ違いを極めたけど帰ったよの挨拶は欠かさなかった。「ただいま」返事はなし。想像の中でも誰も家にいないのは笑える。
住み慣れた部屋にカバンを放り投げ、台所に行って母の部屋を覗く。ベッドには誰もいない。想像の中の自分がさらに想像して寝てる母親をそこに寝かせてみる。寝息が聞こえてこないので、心配して近づいて口に手を当ててみる。
呼吸を手のひらで感じて「あ、よかった」生きてる。って安堵したのも束の間「あ、これ頭の中だった〜」つって手を合わせるのをやめる。
手を合わせてる時だけあの家に帰ろうって決めてるのだ。ちなみに、この家もエコモード。目をつむればすぐに帰れる、家賃もなし。その代償として雨風は凌げないってのは問題である。
いつだってみんなそばにいる。
今はね。
きっとこの想いや思い出も消耗する。いや消耗している。気づけばない。さよならも言えずさよならすることになる。前世もない来世もない。昨日もない明日もない。今しかない。
できるかぎりをできますように〜