懐かしさの作り方その②
その昔、先輩と亡くなった君のために曲を作った、ライブをした、CDを作った、そしてまたライブをした。CDを売った。
そこで売れたCDのお金でお花を買って岡山にあるお墓まで届けに行った。その帰り道に、その子の母親に挨拶をしに行った。
お母さんは絵を描くのが仕事で、そこである絵を見せてもらった。羽の生えた天使の絵だった。
お母さん「初めは羽は描いてなかったんだけどねー。なんだか無性に羽を描きたくなってね…。描いた後、、、あの子が天使になっちゃってさ。」と言った。
たまらなくなった。たまらなくなって「お母さん!その絵!僕に売ってください!」と答えのわかってることを声に出してしまった。
お母さんは厳しい声で「ダメ。」と言った。
わかってたけどショックだった。そんな僕に「早く次の人生を歩みなさいね!」と優しく声をかけてくれたお母さん。
昨日は、後輩のあやのちゃんに誘われてお墓参りに行った。あの子がいなくなってからの方がこの場所に来てて変なの〜ってなる。
いつもと変わらない寺の中にある仏さんの集合住宅へお邪魔する。観音開きをオープンして君のワンルームに風を通す。
線香をあげて、君が若い頃に太鼓を叩いていた写真を眺める。ものごっつい睨みつけるような眼差しだからいつも歓迎されてないって感じで笑える。
報告できることは増えていくはずなのに、報告したいことが減ってきた。次はいつこの場所に立つのだろうか。随分、先な気がした。
それはお嫁さんができたときだろうか。音楽でスターになった時だろうか。それともなんでもないけどまた来たりするのだろうか。未来にとっては今は過去、わかるすべはない。
あ、あれから僕ら以外にも誰かここに来てたりするんだろうか。どうでもいい考えが頭に浮かんできた。別に来てるからって偉いわけでもない。ただ勝手に来てるだけ。
ただ、時々考えるのは彼女の22年はこの後、どこで息を吸って吐いて、眠りにつくんだろうかってこと。
来る途中の電車で思いつきで見た君のSNSでは、どうやら君は35歳だった。このままネットでは歳を重ねて100年後には135歳とかになってるんだろうか。
今はもういない人たちの思い出でネットは溢れるんだろうか。もっとどうでもいいことに、考えが及んだところで君のワンルームを後にした。